外科医とゲーム

他人の褌で新しい記事をあげる青星です。
さて今回取り上げるはこんな話。
この記事によると

ある調査では、ゲームをプレイする外科医の方が、しない外科医よりも高度な手術を素早く行うことができ、ミスも少ないという結果が出た。

ということを、Gentileという人が発表したそうです。
ゲーム脳とか言われて迫害され続けてきたゲーマーの皆様、朗報!と喜んでいるかもしれません。

しかしこれだけだとよくわかんなくてもやもやして気持ち悪いので、ちょいと検索したら「TVゲームの経験値、外科医に好影響! 上手いほど手術の腕アップと判明」が出てきました。(多分、同じ研究グループの人ではないかと。RosserとGentile他の共著となっているので)
それによると、

同レポートは、米国ニューヨーク市のBIDMC(Beth Israel Deaconess Medical Center)医療センターにおいて、男女33名の外科医を対象に実施した調査プロジェクトに基づくとされる。同33名は、開腹せずに難易度の高い手術が行える、腹腔鏡手術のレベルアップを図るため、1日半に及ぶ「Rosser Top Gun Laparoscopic Skills & Suturing Program」訓練プログラムを受講。また、これまでのTVゲームの利用経験などをアンケート調査したほか、現在のゲームプレイのレベルを測定するため、GAMECUBEの「Super Monkey Ball 2」(スーパーモンキーボール2)、PlayStation 2(PS2)の「Star Wars Racer Revenge」(スター・ウォーズ レーサーリベンジ)、Xboxの「Silent Scope」(サイレントスコープ)といったゲームのプレイスコアなどが記録されたという。

調査結果によれば、週3時間以上はTVゲームをプレイしていた時期があると回答した外科医は、今回の腹腔鏡手術訓練プログラムの成績が、TVゲームの利用経験がない外科医と比較して、全体的に42%アップ。手術中のミス項目数が37%少なく、手術速度が27%アップするなどの差が認められたとされる。さらに、現在のTVゲームプレイスコアが優秀だった上位3名の外科医は、他の30名の外科医よりも、訓練プログラムにおける手術ミス項目数が47%少なく、手術速度が39%アップしたとされている。

元ネタもちょっと見てみました。研究者たちは、ゲーマーは「スクリーンを通して操作する」(スクリーンのインタフェース)に慣れているから、腹腔鏡を使った手術、つまりスクリーンを通して手術するのもうまいだろう、という仮定をおいています。
まあ、結果は上のように、ゲーマーであるということのほうが、経験した手術数やら性差やらよりも、うまさに関して重要なファクターだということですが。
(*ちなみに、ゲーマー率はその研究でも男性のほうが多い。)

ただし、ゲームをしているから腹腔鏡手術がうまい、と結論づけるのは時期尚早!
というのは、これはあくまでも相関研究、つまりゲームのうまさと腹腔鏡手術のうまさが関係ありそうですよ、ということを調べた結果であって、「ゲームに慣れているから腹腔鏡手術もうまいんだよ」という因果関係までは証明できないからです。
たとえばこんな可能性が考えられます。

  • もともとゲームと腹腔鏡手術の両方に必要な能力が高いから、ゲームを喜んでプレイしていたし、腹腔鏡手術も得意だ(つまり、ゲームでうまくなったから、ではない)。
  • その共通する能力に欠けている人はそもそも、ゲームを避けてきた。(たとえば私はアクションを避けます……というのは、アクションゲームが苦手だからです。3D酔い起こすしね。得意だったらもっとプレイしていたと思います。)

この間載せた記事の場合は、最初にベースラインを測定し、ゲームをする群としない群という部分だけを変え、他の部分はなるべく均一にして実験をしているので、「ゲームによって空間能力の性差が小さくなる」ということを言いやすいのですが、相関研究の場合はそこまで断言できません。

とはいえ、今回の米国心理学会でのGentile博士の発表が実際にはどのような内容だったのか分からないので、きちんと統制された実験を行っているのであれば因果関係が証明出来るかもしれません。

もっとも、この実験でも使っているゲームは腹腔鏡手術で必要とされる能力とよく似ているものをわざわざ選んでいる(研究者たちが明言)わけですしね……。当然、般化(ある学習で身についたものが、他の課題でも使える)が生じる可能性が考えられます。その手のゲームでハイスコアの人は、当然腹腔鏡訓練でもハイスコアになりそうです。
RPGゲーマーだったら同じ結果が出たか分かりませんよダンナ(もしかしたら、RPGってあんまりお役立ち能力をのばせないのか……?!)

ただ、ゲームで訓練出来るようになれば楽しいだろうし、意欲もわくだろうし、なかなかいいんじゃないの?という気もしないことはないです。

あと、人間が何かを学ぶのは本やら実践やらばかりではなく、ゲームとか遊びとか、あらゆるものから学ぶことが出来るということを示したことでもあります。誰かさんは人生で大切なことは幼稚園の砂場で全部習ったそうですし。

じゃあ、ゲームの人を引きつける力って何だろうなあ、と思うと、ゲームから与えられる即座のフィードバック(自分のやったことがすぐにはっきりと、分かる。しかも報償がある)あたりなのかも。

そーいえば、なんか増えてます。でも書き直すかも。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.