ルクレツィア擁護論

DCのルクレツィアさんに対しては評価が二分しているようですね。
「いい!」という方と「独りよがりでいやな女」という方とで(笑)。純粋に、面白いなあ。

私にとって彼女は今までのヒロインの中ではダントツに好みなので、擁護の論戦を張ってみたいと思います。ゲームでこんな魅力的なヒロインって初めてかも。
彼女……ヒロイン、ですよね(笑)? あ、クリティカルな質問だった?

まずはルクさんの人生を整理。

  1. グリモア博士の助手になる。助手とはいってもまだ学生のようです。グリモア博士の下で博論を書いていたんじゃないか?
  2. グリモアがルクレツィアをかばって死亡。
  3. ガスト博士の助手(FF7の設定)? このあたりまでに博士号を取った?
  4. ガスト博士が逃亡したので宝条博士の元へ助手となる……のか?それともガストの逃亡よりも早くに宝条博士のところに行っていたのかな?(誰かおせーて)
  5. ヴィンセントと出会ってしまう。がーん。
  6. 「ルクレツィア、ちょっと?」と非常に親しげに(←ここポイント:笑)声を掛けながら入ってきたヴィンセントが親父の記録を見つけてしまう! おおーっとルクさんピンチ! それから笑ってくれなくなったとヴィンさんは回想しています。よく覚えてるな!
  7. 何かの告白をしてきた(笑:まずは「好きだ」ですからかね。それともいきなりプロポーズか)ヴィンセントを、グリモアのことを理由に振り切り宝条に走る。子どもが出来る。
  8. おなかの子を実験に使うことを決める。
  9. 心労etcで倒れてしまう。その間に、恐らく宝条によって子どもが無理矢理取り出されてしまう。
  10. 宝条によって撃たれたヴィンセントが倒れるのを見てしまう。その赤い目に掴まってしまう(?)。
  11. ヴィンの改造を行う際(宝条による改造ではヴィンは助からなかったのでしょう)、カオスを埋め込んでしまう
  12. エンシェント・マテリアでカオスを抑制させたが、そのころには自分が心身共にもう保たないことを知り、せめてヴィンに事情を知らせるデータと想い?を残そうと自分の情報をネットワークにまき散らす。
  13. 祠に引きこもる。
  14. 久しぶりにヴィンセントと出会い、セフィロスのことを尋ねる。が、ヴィンは彼は死んだ、と答える。
  15. ヴィンセントにカオスとデスペナルティを託す?(上とここらへんはオリジナルと整合性がなくなってきてるよな気が……)
  16. クリスタルの中で眠りにつく。

こんな感じであっているでしょうか? 悲惨な人生や……(TT)。

どーでもいいんですけど、FF7の博士の呼び方が変ですよね。普通だったらガストは名前なんだから「ファレミス博士」と呼ばれるはずだし、ルクレツィアだったら「クレシェント博士」ですよ。
また、海外なら、共同研究者程度の関係であればファーストネームで呼び合うのは恐らくさほどおかしいことではないでしょうから、ルクレツィアが「グリモア」と呼び捨てにするのもアリだと思うんですが……彼女は丁寧にも「博士」をつけてますよね。

閑話休題。博士という呼称の話を出したので、名前の設定から考えてみましょう。

ルクレツィアという名前を聞いて真っ先に思いついたのは「ルクレツィア・ボルジア」。有名人。
この人は(政略結婚で)兄に振り回された悲劇の美女とも、父のアレッサンドロ6世、兄のチェーザレ・ボルジアと近親相姦関係にあったともいろいろと言われていますよね。晩年は芸術を支援したりしながら生きていたそうです。

もしかしたら、ヴァレンタイン父子に対して同じように恋慕を抱いた、という設定はこのボルジアの「近親相姦」の噂から来ているかもしれません。(設定で彼女はグリモアのことが好きだったというのは確定らしいですよ。)年の差云々あるけど、グリモアとルクレツィアというのはさほど不自然ではなく、教授と学生の信頼関係から(少なくとも一方が)愛するようになるというのはいかにもありそう。
グリモアは早くに妻を亡くしていてそうだし、息子(ヴィン)はすでに独立していた……のかな。恋愛関係はともかく、すごく「いい先生」って感じですよね。グリモアのほうは学生としていつくしんでいるようにも見えたけど……どうかな。ちょっと距離が近い? とにかく愛弟子には変わりないでしょう。
ボルジアの話とは関係ないとしても父子をそれぞれ好きになっちゃうっていうの、わかるよー。ヴァレンタイン父子、二人ともいい人だもん。
性格も似てそうだし、彼女のミスによって死に瀕した時の態度、つまり絶対彼女のせいにはせず怒りもしない、という悟ったお坊さんのようなお人柄。ある意味において、彼女の好みはとても一貫していて一途だと思います。(むしろアンドレ・ジッドの田園交響楽か?)

と思ったらもう一人の候補も出てきました。しらんかった。有名なんですね、この話。「タルクィニウス・スペルブスとルクレツィア」。
陵辱を恥じ、夫に復讐を任せて自殺する……ですか……。
二人とも男で苦労させられた人たちなのね(もっとも昔は男がらみでもなければ歴史に名前が残らないのかもしれない)。寝盗られ男=ヴィンか? う、あてはまりすぎる。 心の奥底ではヴィンセント一筋な非常に貞節な女性だったというルクさんにも。
……しまった、ここはR18サイトではなかった(笑)。生々しい話でごめんなさい。

どちらにせよ「ルクレツィア」という名前=男女関係における悲劇の有名な記号を与えられた時点で、彼女の人生は悲惨なものと設定されたのでしょう。それだけオリジナルFF7の時点で重要な設定を与えられていたのでは?
だってほかにはガスト・ファレミスとかいい加減な名前じゃないですか。重要人物なのに。(何度ファミレスと読み違えそうになったことか。ガストってもちろんあのチェーンレストランのガストですよね? ……え、そうじゃない?)

なお、グリモアは「呪文の本」という意味があるそうです。フランス語らしいですが……。おそらくそこから派生して「obscure writing」、つまり不明瞭な文章という意味があるようです。
グリモア自体は、ベイグラントストーリーでは魔法を習得するためのアイテムとして出てきていますし、グラン・グリモアなる「究極の魔導書」も出てきています。そのためついついイヴァリース世界(FF12の世界のこと)と関係しているのかなーと思ってしまうんですが、うがった見方をすれば、グリモアが彼女を魔法にかけてしまった(道に引きずり込んでしまった)、というふうに考えることもできますよね(いい人だけど)。事の発端は間違いなくグリモアであるわけだし、グリモアの研究をルクレツィアは引き継いでいるらしいことも暗示的に「魔法にかけた」ことを示しているのかもしれません。

で、ヴィンセントの意味は「打ち勝つ」。出典は「怪しい人名辞典」です。
このサイトはすごいのでお薦めですよ。ヴァレンタインの由来は、まあ、お分かりでしょうが聖ウァレンティヌス。バレンタインデー。ありがとうウィキペディア!
彼はようやくDCで、父親がルクレツィアにかけた呪いあるいは魔法=罪の意識を「打ち破った」わけです。ふむ。名は体をあらわす。(こじつけもいいところじゃ。)

えんえんと名前で論じてしまいましたが、次に彼女の人格に移ってみましょう。

割と考えなしに突っ走る人ではないかな、って、ヴィンも言ってたか、「一方的で思い込みが激しい」って(このあたりのヴィンのせりふは好き。ヴィンは本当にルクレツィアのことをすべてひっくるめて愛していたんだなぁと)。
でもルクレツィアは普通の弱さも持っている人ですよね。野望もあるし、自分の犯してしまったことをどうにか隠そうとしてしまう弱さ(謝罪できない弱さ)、かといって過去のことは過去のこと、と振り切ることもできない人。
もし、グリモアのことがなければ、どっちかというと「好きなことに突っ走って”ドジ”る科学者、そのくせやたらと成果は上がる」というタイプだったのではないかと思います(笑)。
明るくて、直情的で裏表のない単純な科学者というステレオタイプに当てはまりそうな人。自分の研究中のことをひたすらに喋りまくって相手にあきれられるとか(笑)、でも愛嬌があるから許されちゃう。
いったん突っ走っちゃうととめられない。好きなことにひたすら愛情を傾ける。だから、結果は出ます。(研究成果は愛情の成果ですよ。)
しかし、彼女はまっすぐすぎた。ちょっと立ち止まって冷静になることができない質で、それゆえに、グリモアを失いました。

おそらく、この性質は自分でもわかっていたんじゃないかと思います。しかも、きっと若いころのヴィンって言葉とかには出さずとも、暇さえあれば彼女をひたむきに見つめちゃったりして、気づかれて真っ赤になってどもったりするんだよー(これは書き手の希望が入ってます(笑))。
だから必要以上に近づいてしまうととらえられてしまう、父親を殺してしまったという罪の意識からそれだけはできない、という強い戒めがあったでしょう。

ルクレツィアは「極端から極端に走る人」というイメージが私の中ではあります。なんというか、そう、稲妻型人生!!
ヴィンへの「愛してしまう」という恋慕を押さえつけるために、振り子が振りきったように宝条と結婚までしていながら(もっとも以前書いたように、宝条に対して無関心ではなかったと思います。なにせ同じ土俵にのっていて、イカれていてもその優秀さは身にしみてわかっていたわけだし、かなり非人道的な実験を行うという点において共犯者的な共同体ではあったと思います)、ヴィンセントが死んでしまったのを見たら今度は振り子が逆に振り切って、ヴィンを助けるために究極の手を使って文字通り身も心もささげてしまう。
この人は単純に感情に従っていれば正しくて幸せな道を歩めただろうに、理性にしたがったがゆえに大失敗してしまった、という感じがしてなりません。

研究においても、生活においても、思い込んだら一直線! そういう裏表のなさ、あるいは隙だらけのところ、ってすごく魅力的~。守らねば!
と思わずヴィン視点からお送りしました(笑)。

でも最期は壮絶。
もうだめだという極限状態においても、本体は壊れてしまっても、それでもヴィンのために事情を説明した記録と想いを残したい。だからネットワークにたとえ偽者だとしても擬似自我をコピーしてばら撒く。うう、切ない……(TT)。そこも彼女が「まっすぐ」たるゆえんだと思います。
これで彼女に惚れ込みましたね、わたしゃ。ヴィンセントが叫んだとき、彼に同化してしまいましたよ(泣)。

ところで、自分の思考をネットワークにばら撒いて保持し、ある時点で集約させるというFragmentProgram。これは宝条とルクレツィアで見事に結果が異なりましたね。

ヴァイスによみがえった宝条はおそらく自分が「擬似」であることを認識していない。ひとつの人格だと思っていたふしがあります。人体を当たり前のように操るべき自我だと。
ゆえに、ヴァイスがよみがえったときに、(精神的に戦って)負けて消え去ったのでのでしょう。特にヴァイス(weiss)=白は、一見無色でありながら、すべての光を反射してしまうことで生じる色でもあります。要するに跳ね返してしまう。

一方、同じ(あるいは類似の)システムで生じたと思われるルクレツィアの場合はちゃんと「擬似」であることを認識していました。そのためシェルクの中で彼女のデータが生じてもどちらか一方が打ち倒すのではなく、共存していけた。
特にシェルクは「無色」のシェルクです(無式とあったけど間違いではないのか……?)。何色にでも染まることができる。だから、彼女の願いまでつい受け取ってしまったと。(シェルクの名前の由来はなんでしょうね? ほかのツヴィエートはみんな色の名前を持ってましたけど……色の名を与えられなかった「みそっかす」なのかな?)
もっとも、今後「ルクレツィア」になるかどうかは、シェルク自身が決めること。ルクレツィアのコピーは、擬似であることを認識しているがゆえにおそらく「のっとろう」とまではしないはずです。もともと、ヴィンセントに想いが通じた時点で義務はすんだし。

私見なんですが、シャルアとシェルクの姉妹はルクレツィアを受け継いだ存在なのかなーとも思ったりします。シャルアは科学者としてのルクレツィア(このひともまっすぐだからなあ。科学者としてルクレツィアと似ているような気がするんですよ)、シェルクは願望としてのルクレツィア。シェルクはとりあえず不老っぽいので(不死はない?)、不老不死のヴィンについていけるしね。ヴィンは27歳、シェルクは10歳くらいでこぼこ年齢差だけど。
一部で「犯罪だー」と話が出ているようですが(笑)、逆にヴィンとシェルクの間に恋愛云々を出さないために、この外見年齢差があるような気がします。
だって、シェルクが実際19の姿をしていて、そのせいでヴィンの中でルクレツィア一筋!がフェイドアウトする可能性が明らかなら一部で反乱起きるでしょ(笑)。
シェルクは確かにヴィンのことをあしからず思ってるとは思いますがね。あ、ちなみに私はシェルクも好きですよ。

最後のあたりはなんだかわけわからん話にまで発展していますが、とりあえず青星のルクレツィア一筋!はお伝えできたと思います(笑)。なんかほかに書こうと思っていたことがあったんですが(いいかげんにやめれ)。
もっとも、このように二つに意見が分かれるというのは、キャラの造形として成功した例だと思います。ルクレツィアはそういった意味においても、私にとっては非常に魅力的な人物です。「善の象徴」でも「悪の象徴」でもなく、ちゃんと「ルクレツィア」という個性を作り上げることができたキャラですからね。

あ、そうそう、ルクレツィアはグリモアの遺言を遂行したと思いますよ。息子に済まない、でしたっけ?
最後、彼女はグリモアの発見したエンシェント・マテリアをヴィンに継がせられたのだから。

追記! 名前の綴りが間違っていました! ルクレツィア・ボルジアのほうはLucreziaですが、こちらのクレシェント博士はLucreciaでした。うが。

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