ユウナについての戯れ言 2

さて、今回はFF10のユウナについて、つらつらと語ってみたいと思います。
容赦のなくとんでもない説を振り回すので、お気に召さない方がおられたらごめんなさい。特にユウナがめちゃくちゃよい子だから好き、という人は読まないほうが良いです!

命をなげうつことを意に介せず、自分の結婚さえも世界平和(?)のための政略として使える「聖女」ユウナは、同時にティーダという自分の好きな男を側に置いておく傲慢さがあり、かつ、ユウナレスカが「ガードの一人を祈り子に差し出せ」と言った時、はっきりと断りました。
(この認識であっていますでしょうか?)

つまり、自己犠牲をいとわない聖女姿と、ある意味、「側にいて欲しい」とも言う大変我が儘な少女の姿、そして自己犠牲をいとわないというほどなのに、結局ユウナレスカから「選べ」と言われたときに拒絶する、という断絶がある、とのT様のご意見は私にとって目から鱗でした。
今回はそれがなぜかをちょっと考えてみます。T様、取り上げることをお許しいただき有り難うございます。思った以上に時間がかかってしまいました。

でも、大変つまらない筋書きです、とあらかじめ申し上げておきます……。

結論から述べると、ユウナは、切実な意味での命の重さを理解していなかったのではないでしょうか。

こう書いてしまうと「ではユウナは偽善者なのか」と悪く受け取られそうですが、そういう意味ではありません。
彼女は、理念としてのスピラ、あるいは理念としての人間が好きだったのであり、実在の人間、実在の世界がまだ好きではなかった、と思うのです。
なお、これ、くどくどと過去形で書いてあることがあとで効いてきますのでよろしく。

彼女は自分の中でイメージした「スピラ」という世界、「人間」という存在をこよなく愛していました。もちろん、普通の人も自分なりに理解した世界や人間という存在を愛したり憎んだりしますが、そもそもは身近にいる人たち、身近な環境に基づいて「世界」や「人間」を理解していくことになります。
幼い頃、彼女にはそのような身近な人間を通して人間や世界を学ぶ機会がなかった。二親とも失われていたからです。

もちろん、スピラでは二親とも亡くしている子供たちはたくさんいます。ワッカもそうです。(ルールーの親もシンによって殺されてるんでしたっけ?)
ただし、彼等の親とユウナの父親とでは、死に対する感情が違います。ワッカやルールーの親の死には悲しみ、ユウナの父親の死には歓喜が与えられました。ワッカは親の顔を知っているだけでも羨ましい、という悲しみをストレートに見せます。彼は痛みを知っています。彼は弟が奪われる痛みも経験しなければなりませんでした。
しかしユウナは痛みよりも父親に対して誇らしい、というプラスの感情を表すのです。失われる痛みを全く感じなかったというほどではありませんが、ワッカほどの切実さがあったとは思えません。

対照的に、ルールーやワッカにとっては命は切実なものでした。が、ユウナ自身、彼等がきょうだいのようなものだと認識していても、彼等は「反対しなかったと思うの?!」と答えなければならなかった。彼女は彼等の言葉を決して聞き入れなかったのです。
彼等のユウナへの愛は本当に涙ぐましいほど。彼女を守ろうと、他の召喚士のガードにまでなって旅しました。彼等は痛みを知っているから、そんな痛みは二度と嫌だとばかりに苦闘します。
その愛をユウナは理解出来ずに召喚士になります。なぜなら、彼女から痛みを伴うほどの「切実な意味を持つ命」が奪われたことはありませんから。
残酷なことをいうと、ルールーやワッカの場合でも、彼女は「彼等が失われることの痛み」を想像することが出来なかったでしょう。もし感じていたのであれば、ルールーが二度も死出の旅ともいえるほどの危険な召喚士の旅に随行することはなかったはずです。
それも当然、彼女は父親の命さえ、世界のために差し出しているのですから。

ユウナはビサイドの寺院で育てられました。
あなたの父親は命を捧げたと賞賛されつづけていたことでしょう。あなたもあの父親の血を引いているのだから、世界のために命を擲てという暗黙の教育もなされていたと思います。彼女が自分の命を軽視するのも簡単に想像がつきます。
だいたい娘にシンのいない世界を、と言って、命を捨ててしまう(結果として命を軽んじた)父親です。彼女には父親しかいなかったのに。もちろん、父親は娘に平和な未来を与えたかったのでしょう。しかし、ユウナという個人から見れば父親から捨てられたも同然です。

さらに、召喚士になると決めたときから、いずれは自分の命を擲つのだから、人間は、あるいは世界は、自分の命に値するほど、素晴らしいものだ、という欺瞞が生まれたとしても不思議ではありません。つまり、実在の世界、実在の人間から知り得た「世界像」や「人間像」ではなく、理念としての輝かしい「世界」と「人間」を信じてしまったのかもしれません。
だから、彼女はどんな目に遭っても「この世界が好きだ」と言えてしまうのです。世界は変わらずに輝かしく、人間は変わらずに親切だ。その理念を持ち続けている限り。それに彼女には周囲の人のみならず他の人からも尊敬され続けます。そして、あらゆる人々からアイテム(笑)でも敬意でも、召喚士という名分がある限り、彼女の欲しいものは「与え続けられます。」彼女はよほどのことがない限り「世界は暗くひどいものだ」と認識する必要がないのです。
むろん、自分の中で欺瞞が生じているとは気がついてもいないでしょう。

あらゆる命の価値が、他の人が思う命の価値よりも軽い彼女は、自分を犠牲に出来ると(本気で)簡単に言えてしまいますし、どうせ失われてしまう命なのだから、シーモアとの結婚も彼女にとってそう大した重みがあったとは思えません。

もっと意地の悪い見方をするなら……というより、恐らくこれがキーだと思うのですが、(ガードが祈り子になるという話を聞く前であれば)究極召喚は命を失うものの、彼女から、彼女の大切なものを奪われることではありません。
ユウナレスカの言ったように、死んでしまえば「痛みはない」。つまり、自分の身から大切なものを引き剥がされるのを知らないままに死んでいけるのです。
これほど彼女にとって都合のよいことはないのではないでしょうか。ふわふわと、自分の信じたいものだけを信じて生きて死ぬ。しかも周囲から賞賛され続ける。ユウナは素晴らしい人間だ、と自分も他人も思ったまま死んでいけるのです
もちろん、反逆者として扱われるシーンもあります。が、自分は正しいことをしていると信じているので、迫害される者として、「迫害されるのは私が偉いからだ」という考え方を持つ可能性もあります。実際偉くなければ追われる必要もないわけですが(笑)。
このようにすれば、彼女は理想化している自己像を決して傷つけずに保つことが出来るわけです。

理念の世界ではすべては必ず彼女の思い通りになった。欲しいものを欲しい、と言わなくても、彼女は周囲を暗黙にコントロールしてきた。つまり、今まですべて、自分の思い通りにさせてきていました
本来はとても強情、あるいは我が儘な少女だと思うんですよ。我が儘というととても言葉が悪くて、「自己犠牲を前提にして生きているほどなのに、我が儘とはなんぞや?」と言われてしまいそうですが、根っこのところでは頑固で、自分の思い通りにするためならどんな努力でもする人間(こういう言い方をすれば穏当か(笑))でしょう。
それが、あれ、と思わされることになります。

彼女の「理念」の世界に、突如、切り込んでくる少年がいました。
それがティーダです。
ティーダは彼女にとっての常識=理念を容赦なく焼き尽くします。召喚士の意味を知らないことで、彼女が思わず知らずに作っていた「理念」の壁を突き崩した上、彼女へ「彼自身を与えなかった」。
彼から見れば、彼女は「単なる通りすがった人」に過ぎませんでした。
いや、可愛いな、くらいは思ったかもしれないけど、あまり大して意識していなかったのは、ガードになってほしい、と頼まれたとき「なんだよ、よくわからないな」というセリフを吐いたところで明確です。いやぁ、ティーダ、容赦ないな(笑)! 彼女だけがティーダのザナルカンドを信じてくれているのにねえ!

だからこそ、彼を欲しいとより思うようになるでしょうし、もちろん「持つことが出来るのは当然」と思っているわけですから、彼を自分の側に置くのも彼女にとってはごく当たり前のことでしょう。

が、彼女は一つ、大きな誤算をしていました。
彼は理念を切り裂いていくと同時に、彼女にとって初めて「生身の感情を抱かせるほどの強烈な引力」を持つことになりました。
理念としての感情ではなく、恋愛という生々しい痛みを伴うものを知ることになります。
このとき初めて、彼女は「命の切実さ」を知ったのではないかと思います。

もちろん、この恋愛が彼女の死で終わるのであれば、彼女自身は「痛みを知らないで済みます」。彼女の理念は崩されないままだったでしょう。
大事な人が死んだらどう思う?ということについて想像力がない彼女は、彼が一人生き残ることについてむしろ安堵さえ覚えると思うのです。私が死んでも、彼は生きていられるし、と。私は何も悪いことをしていない、と。

しかし、ユウナレスカはもっと残酷なことを言います。
祈り子を一人差し出せ。
このとき、最初に彼女の頭に浮かんだのはティーダに違いありません。
それを、自分の我が儘のせいで殺す。
自分が「人を救う召喚士である(、素晴らしい人間だ)」と思っているなら、これほどのダメージはありません。
初めて生々しい感情を感じた相手を殺すことになる。さすがに鈍い少女でも、それがどれほど「悪い」ことなのかを悟らざるを得ません。
さらに、このとき、彼女は「大事な物が奪われる痛み」を思い知らされたのではないでしょうか。
彼女は強情ですから、「理想化した自己概念の喪失」と「奪われる痛み」を拒否します。

ですが、世界は彼女が思うよりもっともっと残酷でした。
彼女の世界はもろくも崩れて、少年は奪われていきます。
このときになってやっと、彼女は「理念の世界」から「実在する世界」に降り立ったのではないでしょうか。召喚士という理念から人間という現実へ。

その「実存」を促す少年が「夢の存在だった」というのに痛烈な皮肉を感じるのは私だけでしょうか。
いや、夢の少年だからこそ、夢のような世界に住んでいた彼女を、上手に実在の世界に連れ出すことが出来たのでしょう。理念の中で生きていた彼女にとって、他にふさわしい男は誰もいなかったのです。

4 thoughts on “ユウナについての戯れ言 2”

  1. おおっ、かえって何か緊張してしまいます……。いや、ご無理には……むしろ個人的には4CCのご感想のほうが(ぼそ)。
    こちらこそ、お題(?)をどうも有り難うございました!

  2.  遅くなりましたが。すみませんちょっと今バタバタしてるもので(笑)。
     やっぱり世間様のユウナんのイメージって「いいこ」なんですか。わたしはずっと彼女をセクトの狂信者っぽいと思ってたんで、ちょっとギャップに目眩が(笑)。いやわたしは悪い女大歓迎なんですがね! まぁそれがなくても、一応RPGは主人公目線でものを見るようにしているので、ジェクトを見てたなら俺(ティーダ)が付いてかざるを得ないことを知ってるだろこの女、とキーリカで既に「悪い女」扱いしてたのですが(笑)。そこでまぁ悪女を期待してたんですが、予想外の「いいこ」にがっかりしたのも確かなので、彼女をいいこと思う気持ちもわからないでもありません。……信じるものに身を投じるそれを「正義と仮定するならば」ですが。
     無知だったんでしょうねぇ。或いはそもそもが人と思想がずれていた。宗教対立なんかでは良くある人格設定でしょうが、最後のところでそれに染まれなかった発端が、まぁユウナレスカの選択肢だったんでしょうね。簡単に言えば、仲間が死んで自分が哀しいんだから、自分が死んだら仲間が哀しむのだと、やっと理解したということなんでしょうけど。いや、どうでしょうね。あの後2年も引き籠もりを続けたところを見ると他人→自分のことはまだ理解してなかったかもしれないですが(笑)。
     個人的には、その場面で(スコールを)差し出してしまったのがイデアとエルオーネだと思うんですね。あの二人は知らなかったか知っててやったかは微妙なところですが、少なくともイデアは知らない側でしょうねぇ。魔女だし(笑)。
     ところで4CC? 7CC(クライシスコア)ではなくて? 4のDS版のことでしょうか?
     7CCのほうはプレイしてないので4DSを、と行きたいところですが、お話を伺ってると、どうもオリジナル4とは大分変わってるようなので、ツッコミ入れて良いのかなぁ、と(笑)。オリジナルではセシルよりずっとカインのほうがイジイジ野郎でしたし、主人公とゴルベーザとの関係も確かゲーム本編では語られなかったはずなんですよねぇ(当時は攻略本だったか何かで明かされた裏設定でした)。だから感想はズレるだろうなぁと思われるのでツッコミにくくて(笑)。
     ただ、「昔のFFがいい」という所謂懐古の人の「いい」は、ストーリーの纏まりにはないと思います。青星さんには大不評だった9の永遠の闇ですが、懐古には寧ろあの唐突感が好評なくらいですから(笑)。ただ、そうですね、5以前のFFの中では、4は最もストーリー的なゲームだったと思います。イージータイプが出たのも恐らく「そのため」だったのではないかと。話を読ませるゲームとしての走りが4でした。で、そのイージータイプを突き詰めてしまったのが、まぁ6~10辺りのヌルくてストーリーが凝ってるFFだった、と(そして12が不評…涙)。
     ただこの懐古趣味にも2種類ありまして、主にファミコン世代の懐古と、スーパーFC世代の懐古に分かれるんですね(実際には1~3と3~5程度の区分。6はどちらとも言えない)。「昔のFFがいい」と言う人は主にSFC世代なんですが、FF3~5のSFCと比較しています。この頃のFFが一番世界観的に(それぞれ別だったにも関わらず)近かったんです。だからこの辺の世界観を愛していた人達は、6以降の機械世界を嫌っていることが多い。しかしこれがFC世代になると、1なんて機械が物凄く出てくる世界ですし、2は反乱軍の世界史のような物語ですし、3はあれだし、全くそういうものは求めてないんですね。
     で、えーと2つの月でしたっけ、あれは9と似たようなものです。一つは地球の衛星、もう一つは月の民の乗り物であると同時にゼムスの封印場所としての作り物。8の月とアデルセメタリーも概念的には似たようなものを継承していると思います。
     ……全く纏まりのない文になりましたがフィーリングで読んでくださいすみません(笑)。お休みなさい(ばったり)。ところでセルフィってselfishからじゃなかったでしたっけ?

  3. まずはご感想有り難うございました!
    そしてコメント欄がまたもや失礼しました……。
    いつもコメントがついつい「承認待ち」になってしまうんですよ……全世界規模の判定プログラムが学習してくれないみたいです(涙)。

    ユウナは至る所で「よい子」とされているみたいですよ。
    ただ、10では思想の対立が(一見するだけには)明確ではないので、ユウナ寄りの見方に誘導するように出来ているのかな、と思いました。
    スコールのように独り言をぶつぶつ表示するのではなくて、ティーダはなんといっても「語り手」、「俺の話を聞いてくれ(無印版ではどうだったか忘れました……。しょっぱなの言葉のインタの字幕はこうでした)」と(どこかにいる)プレイヤーに聞かせるものとして、ちょっと突き放した感があるといいますか。
    それに比べてユウナは、セリフと振る舞いだけですから、彼女はそのまま、「彼女」なんですよね……。

    ティーダが語り手の視点をもつ限り、物語中で完全に生きることは出来ないのかな、と。
    物語が語られるとき、語り手はある意味透明な存在となって、物語の外に存在する人物となる。
    そうなると、ティーダを除いてもっともメインとなるのはユウナなので、その(彼女の)視点から物語を理解させるように、ミスリード(といっていいのか分かりませんが)させるよう作られているのかな……。
    ぼそ、ぼそっと彼の言葉が入っているので、そのときに「あれ、なんだか変だぞ」と思わせつつも、やはりメインはユウナの思考を追うように出来ているのかな……?

    自分でも何が言いたいのかよく分からなくなってきました。世迷い言なので御捨て置き下さい(笑)。

    で、私自身はユウナを「理解不能」として投げていました(笑)。ただ、周囲をよくコントロールする子だなあ、と思っていましたが……。

    先日のご意見は、こうすれば理解可能かもしれない、という自分の意見をまとめる切っ掛けを下さいました。有り難うございます!

    彼女はまだ無知だったというのに一票いれときます……(可哀想なので)。
    他の大召喚士がそれぞれそこそこの年齢だったのに対して、ユウナだけやたらと若いですから、彼等とは覚悟の意味が違ったんじゃないかなあとこれを書いたあとほんのり思いました。

    スコール差し出したお二方、個人的には二人ともちょっと確信犯入っているよーな気がします。(もしかしたらたちもり様のご意見を誤解しているような気がしますが)
    特にシド夫妻は彼を差し出す気満々だったのでは。

    *スコールといえばいえばあのヒラヒラ。既にご存じかもしれませんが、もともと、天野さんの設定画にあったそうですよ。

    で、4DSのこと、すみません。
    うだうだしているのは「声」のせいではないかと思うのです……。
    カインのほうがきりっとした声で兄貴分的であるのに対し、セシルのほうが「悩むー」という感じの声だったのです(笑)。
    もちろんカインも悩んでいるんですが、先に葛藤をクリアしてしゃきっとしているせいで、余計セシルのうだうだ感が目立ったというか。
    ゴルベーザの話は追加されたと聞いていますが、さほどイベントに違いはないようですよ。特にうだうだしてんなーと思ったイベントは同じだったようです(笑)。

    ところで、自分がちらほらと「昔のFFが良かった」と目にするのは「変にSF感のないストレートなファンタジーよ再び」という意見が多かったので、そこらへんの懐古趣味なのかな、と思っていました。
    それはSFCあたりの話なんですねー。納得しました。

    2つの月説明も有り難うございます。
    やっぱりもう1つのほうはいらなかったんじゃないかと……(禁句のような気が)。

    セルフィはSelfishのほうでしたか!覚え違いしていました。
    では、セフィロスは無私的……な?(笑)

    で、白状します、4CCって、あの、歴代最高得点出たばかりの出来事です……。
    いつもあの関連のお話を楽しく拝読させていただいています(大汗)。
    ほんの出来心です。申し訳ございませんでした。

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