ナンバリングタイトル初、植松伸夫さん以外のメインコンポーザーとなった崎元仁さん。(FF11は拡張ディスクからメインコンポーザーが変わっていますが。10-2はまあ……ナンバリングというよりは続編ということで)
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植松さんとはまーったく違う方向の音楽性を持っています。
植松さんはシンプルなメロディラインのはっきりした曲が多いのに対し、崎元さんといえば構成力! 構成力で押し切れ! というところがあって、あまりメロディを主張しない、音を重層的に重ねた華麗なオケを得意とされています。
というほど知っているわけじゃないんですけどね(FFTとFFT-A、ベイグラントストーリー、ステラデウスとFF12のみ)。
でも少なくとも、好きな作曲家さんの一人です。新作出たら買っちゃおうかなーと思ってしまうくらいには。
どのCDも聞くと「あ、崎元さんの音質!」と感じます。
生の音に比べると軽めに仕上げた音というのでしょうか、やや乾いたような音。
ただしこれは狙ってその音を使っているのでしょう。
崎元さんの音楽は和声が凄い。
実はこれがちょっと弱点でもある。ときどき凄まじい不協和音が聞き取れることもあるんですよね。それをまともに生音で出すと「ぐしゃー」と汚い音になってしまいそう、という部分があります。
ただし軽めでさほど主張の強すぎない音を使っているため、構成の面白い効果として迫力が出ているのではないでしょうか。音が重なり合う中で、軽い音を使うことによって重すぎない曲に仕上げている。
そう言った意味で、崎元さんは電子音の特徴をよく捉えていらっしゃって使い方が凄く上手。
ちなみに、FF12のナブディス周りの音楽を作った方は松尾早人さんという作曲家さんですが、音質が違います。CDを聞き慣れてきたら「違う」と分かると思います。崎元さんに比べるとノスタルジックな音(特に弦楽器)です。
音といえば、フルートの音が曲によって力の入れ方が結構違うよーな…(笑)。
「秘密の練習」で使われているフルートは割と「あまりうまくない人が吹いた感じ」で、すーすーしていて、「こ、これは生音使ったほうがいいんじゃないの?」と思いましたが、セロビ台地のほうのフルートはとてもきれいで、丁寧に音の始末をしています。
となると、前者はそれはそれで目論見通りだったのかなー。疑問。
構成力で押し切っていると感じるのは曲の展開部分や始末の仕方でも感じます。
いくつかの曲の進行で「飛んで」っちゃってたり、不自然さを感じるところもあります(たとえば「剣の一閃」は最後→最初に移るループ部分がかみ合ってない。拍が足りない感じ)が、構成力の勢いがあるから、納得させられちゃうんですよ。
さらに、強弱の付け方が独特だなと思うところもあります。ものすごく意識的に強弱をつけてるといえばいいんでしょうか……ああ、これをうまく説明する言葉がない!
そんなこんなで、オケとはいっても、決してクラシックのオケ曲ではない……と思う……。また映画音楽でもない。
ゲームのための音楽、とても贅沢なことだなーと思ったりします。
さて、FF12の音楽は、私の聞いたことのある崎元音楽の中では最もリファインされた曲が揃っています。
曲の精緻度が上がったといえばいいんでしょうか。繊細になったというわけではないのですが、ダイナミックさを残しつつより繊細にもなったといえるかもしれません。
曲の好きずきはそれぞれですが、明らかに音としては上質なものになっています(まるでFF12本体のよーですよ……)。
ゲームの中では、むしろもう少し単純な音楽でも良かったんじゃないかな(そう思う人が植松さんの音楽を望むのだと思います)と思った部分もあります。ギーザとかモスフォーラとかあたりは、通常バトル曲がないとはいえ、ちょっとがちゃがちゃしすぎという印象もありました。音楽とゲームのすりあわせが完全には出来なかったのかなあ。それとも単に自分の印象かなー。
セロビ台地に出た途端にあのほんわりした音楽が出て「うわー、すごくマッチしてる!」と感動した部分もあるんですけど(あの曲、没になりそうだったんですね……いやー、凄く合ってると思うんですが)。
けれど音楽単体として聞くとそれらの音楽はどれも楽しくてわくわくします。出来自体はとても良い。だからCDで聞けば捨て曲ではなくお気に入り曲になるわけです。
またゲームとCDとではかなり音が異なります。「言葉なき戦い」なんて「ええええ?! こんな音だったの?!」とびっくりしました(笑)。原曲を聴いてみたい人は是非。
このCD、お気に入りの曲がたくさんありすぎて、どれがオススメ!とはなかなか言えません。
やはりループデモは外したくないし、実は製作発表会の時の音楽が好きだったり、「自由への戦い」はかっっちょいい!し、セロビ台地はほんわりやさしい気持ちになれるし、「空賊への夢」は少年時代のきらめくような思いをそのまま写し取ったようだし。
ボス系のバトル曲は概して大好き。
ただ、やはり崎元さんと植松さんって方向性が違うので、「ビッグブリッヂの死闘」の音楽は多少キレがないように思いました……。メロディをシンプルに打ち出す曲の場合は、音を多用しない方がいいんでしょうか。
まあ、メロディをとらえようとして聞く人には「音が薄い」と感じられてしまうかもしれません。メロディを掴むところがないので、つかみ所がないというように。実際は音が薄い、とはとうてい思えないんですけどね。
多層的に音をとらえようとする人にはとても面白く感じるはずです。そういう方には強くオススメします。
なお私は構成力を重視するのでこのサントラはものすごーく気に入っています。
自分の聞き慣れた展開などからすると「あれ?」と思う部分があるにせよ、そんなものすっ飛ばして気分を高揚させてくれました。
有り難う、崎元さん!
すみません、ものすごく散漫な記事になってしまいました……。多分まとめると、
- クラシックぽさを求めて聞くと、いくつか不自然な部分がある。
- しかし電子音という選択によってそれがおもしろみになっている。
- したがって、ゲーム音楽でしかありえない。
- ゲーム内ではいささかがちゃがちゃ聞こえていても、曲自体はとても面白い
- 鼻歌で歌えるような曲がないので、普段からインストゥルメンタルではなく歌ものに馴染んでいるような人にとってはつまらないかもしれないが、構成重視の人にとってはゲーム音楽至高の逸品になる。
ってところでしょうか。